名前 | 村林 督夫 |
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役職 | 部長 (兼)小児科部長 |
専門分野・資格 | (専門) 一般小児科、新生児科 (資格) 日本小児科学会代議員 日本小児科学会認定小児科専門医 臨床研修指導医 日本周産期・新生児医学会認定新生児指導医 日本新生児成育医学会員 NCPR(新生児蘇生法)インストラクター 静岡県災害時小児周産期リエゾンメンバー 日本小児科学会静岡地方会理事 静岡県小児救急研究会世話人 静岡県東部臨床小児懇話会会計 FICT(ふじの国感染症専門医共同チーム)東部担当 |
診療科・部門
新生児科
概要
当科は、体が小さい赤ちゃん、早く生まれた赤ちゃん、治療が必要な赤ちゃんを対象とし、新生児集中治療室(NICU)における集中治療を実施しています。NICUでは、専属の小児科医と看護師が診療と看護にあたります。小児科の医師は6名全員が小児科とNICUの両方を診療しているため、赤ちゃんがNICUから退院して大きくなっても、引き続き同じ医師による診療を可能とし、退院後の発育・発達のフォローアップも行っています。これは他の新生児専門センターにはない長所と考えています。病床数は11床、年間の入院は約200人で、静岡県東部地域における新生児診療の地域有数の医療機関であり、地域の周産期医療に貢献しています。
特色
当NICUは、院内で生まれた赤ちゃんをみる以外に、静岡県の周産期医療システムの一部として近隣、遠方を問わず、様々な産科施設からご紹介を受け入れています。非常に体重が小さい赤ちゃん(1,200g未満)や、非常に早く生まれた赤ちゃん(在胎30週未満)は、順天堂大学付属静岡病院(以下、順天堂病院)などの専門のセンターにお願いし、心臓病やおなかの病気で手術などが必要な場合は、静岡県立こども病院などの専門施設に紹介しています。一方で、それらの病院などから当NICUへ入院を受け入れています。例えば、里帰り出産などで県外の病院で治療を受け、状態が落ち着いたので地元の病院に移りたい、というような場合に協力し、連携を行っています。
主な対象疾患
新生児疾患全般:低出生体重児、新生児低血糖、新生児黄疸、新生児一過性多呼吸、特発性呼吸窮迫症候群、胎便吸引症候群、新生児感染症など
低出生体重児
低出生体重児とは、出生時の体重が2,500g未満の新生児を指します。その中でも1,500g未満の児は極低出生体重児、1,000g未満は超低出生体重児と言います。低体重で産まれた児は様々な疾患に罹患する可能性がありますが、低体重であることで必ずしも出生後の経過がよくないわけではありません。慎重に経過を見ながらケアをしていくことが必要になります。
低出生体重児に見られやすい症状として、嘔吐や哺乳障害、血便、お腹の脹れなどといった腸に関係するトラブルがあります。その他にも、黄疸、視力障害、慢性的な呼吸障害、成長発達障害などのリスクを伴う場合もあります。
新生児低血糖
新生児の低血糖は一過性のものと持続性のものがあります。一過性の低血糖はグリコーゲンという肝臓・筋肉などに含まれる代謝に必要な物質を溜めておくことができないことが原因であり、低出生体重児や早期産児にみられます。持続性の低血糖は高インスリン症やホルモン分泌の不足、糖尿病といった遺伝性の代謝疾患などの児にみられます。患児の多くは無症状であり、長期または持続的な低血糖は発汗や頻脈といった軽度から重度となると昏睡、けいれんなども引き起こすため、継続的な観察が必要となります。
新生児黄疸
新生児期は、母体外での呼吸や循環など、身体が外界へ適応する時期であり、生理的黄疸もその過程の一つです。ビリルビンと呼ばれる物質が増えることで起こり、新生児期のある程度の黄疸は、どの赤ちゃんでも見られる現象です。しかし、その中でも何かしらの病的な誘因が存在する場合があります。そのような異常な黄疸を見逃してしまうと、脳性麻痺や難聴といった重篤な合併症を呈することになりますので、黄疸の観察は重要となります。
新生児一過性多呼吸
新生児一過性多呼吸は、出生直後に呼吸が早くなっている場合に疑われ、肺液の排出が遅れていることで生じる疾患です。未熟児や選択的帝王切開によって生まれた正期産児、呼吸抑制がある中で出生した児に起こりやすいと言われています。症状としては、頻呼吸や肋間および肋骨下の陥没、チアノーゼなどがみられる場合もあります。通常は2日~3日以内に回復することが多く、呼吸状態の観察を主に行います。
呼吸窮迫症候群
呼吸窮迫症候群は、在胎37週未満で出生した新生児で最もよくみられ、新生児の肺における肺サーファクタントの欠乏によって引き起こされます。この疾患のリスクは未熟の程度に伴って上昇すると言われており、呻吟呼吸、呼吸補助筋の使用、鼻翼呼吸といった症状が出生直後から数時間以内に出現します。無気肺や呼吸不全が進行するにつれて、症状が悪化するため、チアノーゼや不規則な呼吸、無呼吸症状も呈します。サーファクタントの産生が始まれば、4~5日で消失することもあります。
胎便吸引症候群
胎便吸引症候群とは、胎児にかかる陣痛および分娩時のストレスにより、胎児が分娩前に胎便を羊水中に排泄することがあり、分娩中にその胎便を吸引してしまい、肺損傷および呼吸窮迫を起こすことを言います。また肺炎および気管支の機械的閉塞を引き起こすこともあります。胎便排泄は分娩の約10~15%でみられ、そのうち約5%が吸引してしまうことがあり、分娩時の胎便による羊水混濁と児の呼吸窮迫症状がみられる場合にこの疾患が疑われます。他の症状としてはチアノーゼや酸素飽和度低下などがあります。
新生児感染症
新生児の感染症として、子宮内で経胎盤的または破水を介して起こるもの、分娩時に産道内で起こる分娩時感染、出生後に外部の感染源から起こる分娩後感染、の3つの経路が考えられます。 子宮内感染は出生前のあらゆる時点で起きる可能性があり、母親が感染しているかどうかについては、起因している場合としていない場合があります。また感染症にもウイルス感染と細菌感染があり、頻度の高い原因ウイルスとしては,単純ヘルペスウイルス,ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、サイトメガロウイルス(CMV)、B型肝炎ウイルスなどがあります。原因細菌としては、B群レンサ球菌、グラム陰性腸内細菌(主に大腸菌)、淋菌、クラミジアなどがあります。
検査について
心エコー、頭部エコー、胸部X線、消化管造影、頭部CT・MRIなどを行っています。
治療について
点滴、抗生剤投与、酸素投与、人工呼吸、光線療法、交換輸血、中心静脈栄養などを行っています。
低出生体重児
低出生体重児の治療は、週数や体重などから決定され、生後すぐに呼吸や循環動態を集中的にサポートする治療が必要とされることがあります。また、一方で、慎重な経過観察のみで対応されることもあります。状況に合わせて、酸素投与や挿管も含めた呼吸の管理、昇圧剤の使用や抗生物質の投与、体温管理、輸血、栄養管理など全身状態の管理を実施します。
新生児低血糖
低血糖に対して、ブドウ糖の投与、経腸栄養、ときにグルカゴン投与なども行います。リスクが高い児の場合には、ほぼ予防的に治療が行われます。インスリン使用中の糖尿病の母親から生まれた新生児は、出生時点から治療を行います。呼吸状態が悪い場合や超未熟児の場合も同様です。
新生児黄疸
生理的黄疸は、基本的には治療の必要はないとされています。治療が必要な黄疸の場合には、ビリルビンの排出を促し、ビリルビンの上昇を防ぐことを目的として、光線療法や交換輸血療法、薬物療法などの中から児に適した治療を選択します。
新生児一過性多呼吸
新生児一過性多呼吸の治療として、主として酸素投与、血液ガスまたは酸素飽和度などで呼吸状態のモニタリングを行います。まれに、超未熟児や出生時に神経抑制がある児の場合には、持続陽圧呼吸療法を実施し、人工的に換気を行います。また、肺炎や呼吸窮迫症候群などでも同じような症状があるため、胸部X線検査や血液検査、血液培養を行うこともあります。
呼吸窮迫症候群
呼吸窮迫症候群の治療として、サーファクタント療法および酸素投与や必要時は人工換気を行います。サーファクタントとは界面活性剤であり、サーファクタント療法は人工サーファクタント製剤の補充を気管挿管し行うものです。また、十分な換気補助のみでもサーファクタントの産生はやがて始まるため、産生を促すことが重要となります。
胎便吸引症候群
胎便吸引症候群の治療として、分娩時に新生児が呼吸を開始する前に積極的に吸引を行い、その後必要であれば、呼吸補助を行います。補助としては、酸素投与、気管挿管、機械的人工換気などが考えられ、胸部X線検査で肺炎などの徴候もあれば、抗菌薬の投与も検討します。
新生児感染症
新生児における感染症の症状と徴候には様々なものがあります。ウイルスや細菌により異なるが、一般的には嘔吐や哺乳不良、発熱、低体温、頻呼吸、下痢などが挙げられます。出生前に感染した先天性感染症の多くは、子宮内発育不良、難聴、奇形、神経学的異常などが挙げられる。新生児で細菌感染症が疑われる場合の一次治療は、抗菌剤の投与となります。最終的な薬剤の選択は成人での実施と同様、培養検査の結果に基づいて行います。
体制
名前 | 香山 一憲 |
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役職 | 医長 |
専門分野・資格 | (専門) 新生児(NICU) (資格)日本小児科学会認定小児科専門医 日本周産期新生児医学会認定新生児専門医・新生児指導医 NCPR(新生児蘇生法)インストラクター 静岡県災害時小児周産期リエゾンメンバー |
名前 | 藤田 瑞穂 |
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役職 | 医員 |
専門分野・資格 | (専門) 一般小児・新生児 (資格) 日本小児科学会認定小児科専門医 PALS Provider |
名前 | 京 清志 |
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役職 | 医員 |
専門分野・資格 | (専門) 一般小児・新生児 日本小児科学会認定小児科専門医 |
実績
1年間に200例前後の新生児の入院管理を行っています。
その他
ファミリールームとカンガルーケアについて
当NICUは仕切りがなくワンフロアですが、看護師のアイデアでNICU内にファミリールームという別室を作りました。このファミリールームでは、面会時間にお母さんと赤ちゃんで過ごしたり、カンガルーケアを行ったりしています。
カンガルーケアとは、長い間保育器に入っている赤ちゃんとの触れあいのため、赤ちゃんを保護者の胸の上に寝かせてあげて、母児のスキンシップを高めることをいいます。赤ちゃんにとっても、お母さんにとっても、安心感と満足感が得られます。気持ちがよくなって眠り込んでしまう方も多いです。
育児指導について
軽症ですぐに退院出来る赤ちゃんの他、小さく生まれた赤ちゃん、呼吸障害のある赤ちゃんなど長く入院する赤ちゃんもいます。様々な病態に合わせてお母さんに接し、育児指導を行っています。